ESSAYS 
 


集合住宅2題

1.染地の住宅

左/全景 中/正面上部−斜線および採光の関係か、片流れに近い屋根 右/敷地境界−隣棟間隔は最小限

題名は集合住宅2題ですが、この写真の住宅は良く見ると集合住宅ではなく戸建て住宅が並んでいるのです。その間隔はおそらく法律(建築基準法ではなく民法です)の限度いっぱいで敷地境界からそれぞれ50cmずつ、計1mといったところでしょう。全くと言っていいほど同じ形をした住宅がこれだけたくさん並んでいる姿はちょっと他では見ることが出来ません。

おそらくこの住宅は木造あるいは鉄骨造と思われるので、隣家との戸境壁の防音・遮音のことを考えると1mでもあけた方が建設費は安くなるかもしれませんし、2階の部屋の一部はこの隙間から建築基準法に定められた採光を確保している可能性は高いです。全部をまとめてひとつの建物にすると構造的にも木造では困難になります。

しかし、そういったこと以上にここでは「所有する」という意識の問題が関係しているのではないでしょうか。欧米では一般的に見られるタウンハウス(いわゆる縦割り長屋)は日本ではめったに目にすることはありません。造ってもあまり売れないそうです。住宅は一生をかけた財産ですから、その所有範囲を明確にしておきたいという意識が強くなるのは仕方のないこととも言えます。日本では、実は、住宅というのは「住む」ことを目的としているのではなく、「持つ」ことを目的としているのかもしれません。

しかしこの住宅でも、前述のような問題点はあるにしても、全体をまとめて一棟とし、今ある隙間のかわりに2、3坪のまとまった光庭や共有空間をとった方がどれだけ快適な住宅になるかわかりません。



2.調布ハウス

左/北側の玄関側 中/南側−デザイン的にはかなりシンプル 右/共用の集会所および外周沿いの駐車場 

この写真の住宅は布田5丁目にある調布ハウスという集合住宅団地です。

4、5軒の2階建て住宅(一部3階建て)を一棟にしたタウンハウスが10棟足らず並んでいます。前述の染地の住宅に比べるとここの方がはるかに敷地に余裕があり、戸建て住宅を並べることも計画的には十分可能であったと思われます。にもかかわらずタウンハウスとすることにより、共有部分や庭、玄関まわり等の外部空間をゆったりととっています。

左/通りからちょっと奥まった玄関 右/2軒の玄関が向き合った半共有のアプローチ


調布ハウスは築後17、8年ほど経つそうですが、多くの家が玄関回り(ここも共有のタイプもある)に花を飾るなどしていて、とても落ち着いた街並みとなっています。また、ここでは駐車場は全て団地の外周沿いにまとめられており、団地内の道路は私道で救急車等の緊急自動車以外は進入禁止となっています。しかし、この道路に全住戸が接続しているので必要ならば棟単位の建替えも可能と思われます。4、5軒ならば意志の疎通もし易く、近年問題になっているマンション建替えの困難さも大規模マンションに比べるとそれほど大きくないのではないでしょうか。

調布ハウスほどゆったりとしたものは難しいとしても、これからの都市部での住宅はこういったタウンハウス形式も選択肢のひとつとして検討してみても良いのではないでしょうか。定期借地権やつくば方式と組合わせるとより有効かもしれません。
住宅に対する意識を少し変えることによりずっと快適な生活がおくれる可能性があります。

1998/09/29


追記1/染地の住宅は調布のデベロッパーが手がけているのか、調布市内のあちらこちらでほとんど同じ形の住宅を見かけることがあります。おまえこんなところにもいたのかぁ、という感じでちょっと面白いです。皆さんも探してみてください。

追記2/染地の住宅の写真を見ながらその構造を考えていたのですが、鉄筋コンクリート造はコスト的に考え難いし、鉄骨造か木造だろうと思いながら駐車場の天井の道路に面した部分が面取り(天井と壁の角の部分が斜めになっている)としてあるのが気になっていました。鉄骨造や木造ではこんなものは出てきません。はっと気づきました。これはボックスカルバートという、地下道の共同溝等に使われるロの字型の鉄筋コンクリートの既製品なのです(共同溝を造る時にはこれをたくさん並べて使います)。そう思って壁の足元に目を移すとここにも天井と同様の面取り(ハンチと言います)がありました。このような柱のない広い間口を木造で造るのはいろいろ厄介なので通常はそこだけ鉄骨を使ったりするのですが、ボックスカルバートを使った例は見たことがありませんでした、びっくりです。

1998/09/30