OVERLAND 
 




今でも時より届く葉書を読むとあの頃のことを思い出す。十数日もかかって届いた、切手の印刷のずれた葉書。 旅先で知り合った友人からの葉書だ。そのまま海外にいる者、一度は帰国したが再び出かけていった者達からの言葉は未だに僕を揺り動かす。中でも特に心に浮かぶのは地平線だ。日本ではめったにみることのない地平線を旅先では毎日のように眺めていた。僕にとって地平線は旅を象徴している。




ギリシャの話から始めようと思う。この旅行は中米から始まり、北米・ヨーロッパをまわってギリシャに入ったのは1月26日、日本を発ってから既に7ヶ月近くがたった頃だったのでここが始まりというわけではないのだが、ここまでは「旅行」であり、ここが「旅」の始まりだったという気がする。英語の通じる確率は大きく下がり、人々の顔はヨーロッパの白人よりはトルコ人に近く、食べ物も同様であった。物価も他のヨーロッパ諸国に比較すると半分程度で、ギリシャに入って初めて僕は財布を気にせず食事をとることが出来るようになり、移動速度も明らかにのんびりしたものになった。地理的にも、当時の旧ユーゴスラビアを通るにはいくつもの問題があり、ギリシャへはイタリアから船で入った。つまり僕にとってギリシャは海を越えた向こうの国であったのだ。


写真の葉書はネパールのボーダナートから奥田剛さんがくれたもの。彼の葉書の差出人住所は僕が会った4年前からずっと変わらず、決まった住所を持たない長期旅行者がよくやる手段なのだが、カトマンズの日本大使館気付である。